シナスタジア

はじめまして、Learning stage所属講師の小柳美恵子です。

 

前々回、音には色があるというお話がありましたが、世の中にはシナスタジア(共感覚)という感覚を持っている人がいるそうです。シナスタジアというのは、ある刺激に対して、通常の感覚だけでなく、異なる種類の感覚が無意識に引き起こされる、特殊な知覚現象のことです。シナスタジアを持つ人は、文字や音に色を感じたり、形に味を感じるようです。「黄色い声」などの比喩表現とは違って、本当にそこにあるように感じるのだそうです。作曲家リストは、オーケストラに「そこはもっと青色を強く」という指示を出していたという記録が残っています。

 

昨年シンガポール・アート・ミュージアムで開かれていたSENSORIUM360°展では、香りを音楽で表現した作品が展示されていました。Goldie Pobladorというフィリピン生まれの女性アーティストによる、臭覚と聴覚が引き起こす感情や記憶をテーマにした作品です。私達はある音楽を聞いて、特定の人や場所を思い出したりすることがありますが、それと同じように、ある香りから思い出がよみがえったりすることもあるものです。これはシナスタジアではなく普通の感覚ですが、ある音楽を聞くことによって匂いを感じる人がいるそうで、このアーティストもそういうシナスタジアを持っているのか、数種類の香りを曲にして発表していました。

 

その作品に出会ってから、いろんなシナスタジアを持った人がいることを知りました。例えば、「クラシック音楽を聞くとチーズの匂いがする」、「遮断機の音は炎天下に放置された車内の匂い」とか、「自転車の急ブレーキの音はゴーヤの味がする」「足音は甘い味」←こちらは匂いではなく味ですね。いろいろ検索していたら、シナスタジアを持つ人が作品として表現した画像を見つけました。ラフマニノフ作曲”ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18より第一楽章Moderato”を聴いているときに感じる色とのことです。音楽を聴いて目の前に勝手に色が現れるって素敵ですね。シナスタジアを持つ人にまだ直に出会ったことはありませんが、直接お話を伺ってみたいものです。