前回、英語の多読と精読について触れました。
英語の多読と精読をバランス良く
記事で、下記の方法もご紹介しましたが、
①本を読み進める中、分からない単語に下線を引く
②分からない単語の意味をまとめて辞書で引く
③レッスンで意味の確認、文脈を理解
④意味を覚えているか、単語の確認
ただ・・・
この通りに進めたら、
英語がたくさん読めるようになる!!
単語もすぐに覚えられる!!
というものではありません。
特に、覚える英単語が多数ある場合、これを一通り数回行っただけで、すぐに効果が出るものではありません(・・;)
何回も繰り返す必要があるのですが、
それでは、子どもが一連の学習の流れを繰り返し行う際、実際、脳ではどのようなことが起きているのでしょうか?
学習記憶の中には、ワーキングメモリー(作業記憶)と呼ばれる高次の脳機能があります。
このワーキングメモリーですが、容量に限度があるため、一度にたくさんのことを行おうとすると、負担がかかります(・・;)
例えば、上記の一連の作業ですが、
①では、本を読み進めるという情報処理にワーキングメモリーの大半が使われてしまっているので、新しい単語を覚える余裕はありません。
②の場合、ワーキングメモリーは辞書を引いて意味を調べるという作業に充てられます。
③の作業時は、単語の意味を理解するためにワーキングメモリーが使われ、
④←ここにきて、初めて、知らない単語を覚えるという作業にワーキングメモリーが充てられることになります。
ワーキングメモリーの研究では、radial arm maze(放射状迷路)と呼ばれる実験装置が用いられることがあります。

放射状に伸びたアーム(腕)の先に餌を置き、ネズミがそれを探し当てる実験です。
例えば、練習用のサンプル・テストで、餌のあるアームの位置を覚えたネズミが、実際の実験では、別のアーム(反対側のアームだったり、隣のアームだったり)に餌があることを理解しないといけない実験を行った場合、
ネズミは最初、サンプル・テストで餌のあったアームに先ず行ってしまいますが、最初の位置とは別のアームに餌があるということを学習していき、繰り返し課題を行うことにより、最終的には正解率も上がっていき、正しいアームに辿り着く速さも早くなっていきます。
この時、最初のアームに行こうと一旦、足を踏み入れるのですが、引き返して、正解のアームへ向かう、ということが途中、見られることがあります。
すぐには覚えられなくても、何かがきっかけとなり、正しい方へ進む、というこの途中経過が、英語学習にも重要だなぁと感じます(^▽^)
先述の①~④の学習プロセスを考えても、これを一回一通り行うだけで単語の意味を覚えようとするとワーキングメモリーにとっては、多大な負担です(^-^;
そのため、単語の意味を効率良く処理するには、少しずつワーキングメモリーの負荷を減らしていくことが必要です。
単語帳を見て一回で意味を覚えることはできませんので、思い出すためのきっかけを作ってあげてみる(^▽^)
記憶が刺激されるような関連付けですね☆
生徒さんとは、実際のレッスンで、こんなことを試しています。
単語帳の中で、なかなか覚えられない英単語を選び、その単語が載っている本の中に、直接、意味を思い出すためのヒントとなるような絵を描いてみるのです。
そうすることによって、次に単語帳でまた同じ単語を見かけ、意味を覚えていない場合、本を開いてヒントを見た瞬間、その意味を思い出す、ということがあります☆彡
ヒントを書き込んだり、ヒントを繰り返し目にしたり、ヒントを頭の中で思い出してみることが、意味を覚えるきっかけとなり、さらにその間、いくつかステップを置くことにより、それぞれのワーキングメモリーの負荷を減らすことができ、
最終的には、意味を覚えるというワーキングメモリーが強化されます。
案外、子どもは、どんな絵を描こうかと、工夫を凝らし、ゲーム感覚で取り組んだりします。
新しい単語を思い出そうとするプロセスは、ヒントを本に書き込むところから、もうすでに始まってるのですね(^▽^)v
何をヒントとして描いたら自分が思い出せるか、ということを考えながら描くわけですから。
一つ一つの小さなプロセスを大事にしていくことが、最終的にはワーキングメモリーを効率良く使い、更に記憶を強化することに繋がります。
実際に、この作業が「類義語」を意識するきっかけとなり、生徒さん自身が様々な単語を頭の中で、自分で意味づけする方向へと進んだり、似たような内容の本と自然に関連付けるようになるなど、学習の相乗効果という嬉しい副産物も生まれています。
これは、広い意味でのマインド・マップと呼ばれるものです。

語彙を増やす作業は、意味を覚えるまでの引き出しを
たくさん作ってあげるような、そんなプロセスですね★
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